みいな通信again  定年退職〜本と音楽と時々オトン

定年退職後再就職せず、父の面倒見ながら好きなことする日々の記録。

ほぼ日刊イトイ新聞 佐藤正午+糸井重里 対談

糸井重里が、佐藤正午の『鳩の撃退法』の文庫解説を書いたことがきっかけで、対談が実現したようです。

【佐藤『最近思ったんですけど、ぼくは書くことより書き直すほうがだんぜん得意なんです。』

『書き直しを楽しんでいるという部分は、たしかにあります。』

『ぼくは、まず30枚書きあげたとしても、それは実際には「リハーサルみたいな感じ」です。リハーサルを書きあげたあとの1週間ぐらいがとても楽しい。「これに手を入れる」という段階の初日から楽しくなってきます。』】

そうだったのか。あの読んでいて気持ちの良い文章は、そうやって作られていたんですか。

私は、文章は一発で書き上げたい、手を入れると初めに書いた文章がなくなっていくのが勿体無いという、謎のケチ根性が発動しがち。

書き直すことを恐れるより、楽しむのかぁ。勉強になります!

 

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脳内BGM♪リライト/ASIAN KUNG-FU GENERATION

 

「さみしい夜にはペンを持て」 著/古賀 史健 絵/ならの ポプラ社

【ぼくの名前はタコジロー。勉強はできないし、運動もダメ。おしゃべりだってうまくない。おかげで中学に上がってからはずっと、いじめられていた。公園の片隅で、偶然出会ったヤドカリのおじさん。おじさんはぼくに、教えてくれた。永遠みたいなひとりの夜を、どう過ごせばいいのかを。】

 

頭の中には、「ことばにならない思い」が渦まいていて、うまくしゃべれないのは「思う」と「言う」には距離があるから。

どんな文章にも読者がいて、日記にも読者がいる。未来の自分という読者が。

だから日記は、秘密の書きものから秘密の読みものへなっていく。

そして、書くことによって、心の中も整理されていく。

文章を書くのが苦手な私にとって、今までで一番わかりやすい文章読本だったかもしれません。

私はうまく言語化できない自分の思いを、言語化してくれているものを求めて本を読んでいるのかも…。そんなことも考えました。

 

 

f:id:miinatuusin:20240408151934j:image☆書けない時でも、とりあえずペンを持て!☆

 

脳内BGM♪ループ&ループ/ASIAN KUNG-FU GENERATION

「フェミニスト 紫式部の生活と意見 ~現代用語で読み解く『源氏物語』~」奥山景布子 集英社

平安文学研究者出身の作家・奥山景布子初の古典エッセイ。

フェミニズム」「ジェンダー」「ホモソーシャル」「おひとりさま」「ルッキズム」など、現代を象徴するキーワードを切り口に「源氏物語」を読み解くとのこと。

夕顔の企みとか、葵の上と六条御息所の因縁とか、『雨夜の品定め』で光源氏が同僚らとともに「理想の女」「ひどい女」の話で盛り上がるくだりは「ホモソーシャル」とか。

ほぉほぉ、面白い視点だわ、これは。

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脳内BGM♪水中メガネ/草野マサムネ

「杉森くんを殺すには」長谷川まりる  くもん出版

【「杉森くんを殺すことにしたの」。

高校1年生のヒロは、兄のミトさんに電話でそう告げた。

ミトさんからのアドバイスは、

一、やりのこしたことをやる。

二、杉森くんを殺さなきゃいけない理由をまとめておく。だった。

貯金箱を壊して漫画をごっそり買い、杉森くんを殺す理由を15個リストアップした。】

 

さわやかできれいなブルーの装丁に可愛いイラスト。なのに対照的な、なんとも刺激的なタイトル。

ヒロのやりのこしたことを実行する日常の描写の合間に、杉森くんを殺す理由が示されていく。

前半は杉森くんの嫌なことばかりが記されるが、後半から少し変わってくる。

ヒロの心の揺れ。他人との距離感。依存と自立。喪失し、やがて心を取り戻す、そんな物語。

 

f:id:miinatuusin:20240413150904j:image☆『第9回ビブリオバトル全国大会in生駒』で決勝を勝ち抜いた本☆

 

脳内BGM♪ストレンジ カメレオン/the pillows

 

「エッセイストのように生きる」松浦弥太郎 光文社

エッセイストになりたいわけでは無いのですが読んでみました。

『「エッセイストという生き方」とは、なにかになるための生き方ではなく、自分はどんな人間になりたいのかを考える生き方です。』

『書いてみるもののなかなか最後まで完成させられない人。これは、「最高のエッセイを書こう」としているパターンが多いようです。名作エッセイを目指して力んでしまうのかもしれません。』

『大作を書こうとか、オチをつくらないととか、欲を出してはいけません。』

本を読むのが好きだったら文章を書けるでしょうと、よく言われます。いやいやいや、文章を書くのは苦手です。食べるの好きだからって料理できるわけじゃないでしょうと、いつも反論しています。

でも、料理も出来るといいなと思うし、文章も書けるといいなと思う。

力んだり欲を出したりしているだけですね。

 

f:id:miinatuusin:20240314183252j:image☆著者は「暮しの手帖」の前編集長☆

 

脳内BGM♪桜の道/風

 

「週末は、おくのほそ道。」大橋祟行 双葉文庫

今度は書店で『本の福袋』を買いました。

中身が見えない袋に入っていて、もちろんタイトルや著者名は無く、文庫の帯に書かれた文言が袋の外に貼られていました。

その中に「奥の細道」とだけ貼られたものがありました。松尾芭蕉奥の細道がそのまま入ってるわけないやろうしと気になり、買って帰りました。

裏表紙に書かれた紹介文。【高校教員の美穂は30歳。仕事に追われ疲労困憊の日々、恋人ともうまくいっていない。そんなある日、高校時代ともに「俳句甲子園」に出場した友人・空と、SNSで再会する。美穂は俳句に親しんだ日々を懐かしみ、いつか行ってみたいと思っていた「おくのほそ道」をめぐる旅に空を誘う。週末ごとに松尾芭蕉たちが辿った地をふたりで旅しながら、日常を離れ心を休める美穂。同行してくれた空は、この旅路で「会いたい人」がいるようで…。】

ただの旅行記ではない。

国語教師である美穂が時おり挟み込んでくる「おくのほそ道」についての解説がいい。

旅の描写に実際の風景や実在する店が出てくるので、観光ガイド的な部分もあり、旅心がそそられる。

そこに美穂の仕事や勉強したいという思い、空が高校時代突然転校した理由や今までの暮らしなどが少しずつ謎解きのようにあかされていく。空の会いたい人ってもしかして…。

初めての作家でしたが、読めてよかったです。

 

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脳内BGM♪魔女旅に出るスピッツ

5年前の3月27日

5年前の3月27日、仕事をしている私のところへ一本の電話がありました。両親の家の近所の内科の先生からでした。「紹介状を書くから、今すぐお母さんを大きな病院に連れて行ってほしい」と。

毎年お正月明けに健康診断を受けていた母。その年は風邪が治りにくい、治ってから健康診断を受けるわと言っていましたが、内科の先生が「血液検査だけでもしときましょうよ」と検査をしてくださった。そして、血液細胞の写真を見て異常を感じたので電話したとのこと。

電話の後早退し、母を連れて大学病院へ行きました。

骨髄検査の結果『骨髄異形成症候群』という血液のガンの一番悪いステージ。大学病院にはベッドの空きがなく、翌日から隣町にある系列の病院へ入院することになりました。

それまで、残業の無い日は書店へ寄ったりボルダリングへ行ったり、のんきに過ごしていた私の生活がめまぐるしく一変しました。

 

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脳内BGM♪春だったね/吉田拓郎